校長ブログ

【校長ブログ】第77回卒業証書授与式

 本日、3月15日、春日部高校では、第77回卒業証書授与式を挙行いたしました。

 御多忙の中、御臨席を賜り77期生の前途を祝福してくださった御来賓の皆様、御列席をいただきました保護者の皆様にお礼を申し上げます。

 この日を迎えるにあたり、生徒の皆さんの努力や成長を見守り支えていただいた保護者の皆さまの御尽力に、深く感謝申し上げます。

 御子息の高校生活は、本校の校訓である質実剛健、教育方針の文武両道をもと、学びの場であると同時に、多くの挑戦、そして困難を乗り越える場でもありました。その中で、生徒たちは知識だけでなく、困難に立ち向かう力、そして人間性を磨きました。この春日部高校で培った力や価値観が、これからの人生の大きな土台となると考えます。

 今後も生徒たちが歩んでいく未来を温かく見守り、引き続きサポートしていただければ幸いです。御子息が社会に羽ばたき、大きく成長していく姿を共に喜び合えたらと思います。

 なお、校長式辞では、「生涯にわたり、学問の境界を設けず、広く学びつづけること。そして、「社会の様々な出来事に、自ら課題意識」を持ち、確固たる「志」を立て、その実現に努力して欲しい」と、校長からの思いを伝えさせていただきました。

式辞 

 厳しかった冬の寒さも日増しにやわらぎ、春の息吹を感じる季節になりました。この春の佳き日に、埼玉県立春日部高等学校 第七七回卒業証書授与式を挙行できますことは、卒業生はもとより、在校生、教職員一同、この上もない喜びでございます。

 PTA会長 水本 淳一朗 様、後援会会長 相澤 歩 様、同窓会会長 種村 隆久 様をはじめ、公私共にお忙しい中、多くの御来賓の皆様の御臨席を賜り、厚くお礼申し上げます。

 保護者の皆様におかれましては、御子息の御卒業、心からお祝い申し上げます。この三年間は様々な御苦労、御心配があったことと拝察いたします。御子息は本校の高校生活をつうじて、逞しく立派に成長されました。御子息を支え、育まれて来られたことに対しまして敬意を表しますとともに、これまで本校の教育活動に御理解と御協力、御支援をい ただきましたことに心より感謝申し上げます。

 さて、ただ今、卒業証書を授与しました352名の77期生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、3年前に春日部高等学校の狭き門を突破し、それぞれの夢や希望を抱き、入学してきました。ウイズコロナが模索される中で、入学当初は教育活動の制限もありましたが、今年度の春高祭や大運動会等の学校行事では「先輩たちが築いてきた伝統を継承し、新たな伝統を創る」という熱意でリーダーシップを十分発揮してくれました。大運動会では、受験の気になる時期に、準備のため多くの時間とエネルギーを費やした入場行進、その午後、校庭で実施した水を打ったような静けさの中で、凛とした表情で春高体操の演技、とても対照的でメリハリのある行動に痺れました。その時、改めて私が、春日部高校の教育は間違っていないと確信した瞬間でした。

 本日、春日部高等学校から、それぞれの夢と希望を持って、新たな道へ歩み出していきます。

 皆さんがこれから進学する大学では、学び方や研究の仕方、それ自体が変わりつつある時代となってきている、と東京大学総長の藤井輝夫先生は述べています。その変化を象徴する出来事の一つが、昨年のノーベル物理学賞、そして化学賞です。ノーベル物理学賞は、物理学の知見を活用して人工知能の基礎を構築した情報科学分野の研究に授与されました。一方で、ノーベル化学賞は、その人工知能を用いて、タンパク質の立体構造についての高精度の予測を実現した研究者たちに贈られました。タンパク質の立体構造の予測や決定は生命科学、ひいては創薬や病気の原因解明にとって大変重要ですが、これまでの実験や解析技術では一つの構造を決定するのに数年かかることもあり、科学の偉大なチャレンジの一つとされてきました。それが今回の技術により、早いものではたった数分で高精度の構造予測を行うことが可能となりました。

 こうした学問の新たな展開は、社会、文化、自然、人工物、そして情報を扱うすべての学術分野において、分野間の境界を意識しない基礎教育の重要性を強く示唆しています。学び方や研究の仕方それ自体が、変わりつつある時代となっていることを、強く意識する必要があります。

 また、今日、グローバル化や情報化の進展、高齢化・少子化などの社会の変化は、様々な形で我が国のあらゆる分野に影響を及ぼし、将来の予測がますます困難な時代となっています。皆さんがこれからの社会を担い、未来を切り開いていくためには、主体的に判断して行動し、課題をより良く解決する能力が一層重要になります。そこで、これからの社会を生き抜いて行く皆さんに、校長としての思いを伝えます。

 それは、生涯にわたり、学問の境界を設けず、広く学びつづけること。そして、「社会の様々な出来事に、自ら課題意識」を持ち、確固たる「志」を立て、その実現に努力して欲しいということです。

 「学ぶ」ということは、単に知識を得ることではありません。学ぶ目的は人格と識見を向上させ、自らを律して人として成長していくことであり、困難な場面に遭遇した時、これに対処できる力を身に付けることにあります。皆さんが生涯に渡って学ぶ心を忘れず、知性と品格を磨き、社会の発展に貢献できる生き方をすることを強く願っています。

 皆さんのような才能のある若者はこの国の財産であり、皆さんのこれからの活躍が、現在、我が国が抱える、外交や経済、エネルギーや環境など様々な課題を解決していくことにつながります。そのためには、「社会の様々な出来事に、自ら課題意識を持つ」ということが重要な出発点となります。課題意識を持っていない人からは、課題を解決していくための考えや行動は決して生まれないからです。社会に貢献し支えていこうとする気持ちの源は、「自らの課題意識から出た思い」に存在し、そこから確固たる「志」が立てられると考えます。

 100年以上にわたって謳い継がれてきた校歌の中で3番の「忍耐剛毅わがつるぎ 誠実質素われがたて」は、春高生の心意気を表しています。旧制粕壁中学校時代を含めると先輩たちは三万八千人を超えます。その先輩たちは社会の様々な分野で活躍し、我が国の発展に貢献されてきました。この春日部高等学校の卒業生としての誇りを胸に、先輩たちを越える活躍を目指すとともに、皆さんに続く後輩たちの良き目標となるような社会人に成長することを期待しています。

 結びに、本日、御多忙の中、御臨席を賜り七七期生の前途を祝福してくださった御来賓の皆様、御列席をいただきました保護者の皆様に再度、お礼を申し上げ、式辞といたします。

 

                         令和7年3月15日

                         埼玉県立春日部高等学校長 角坂 清博