【校長ブログ】総合知の大切さ~文系か、理系かを乗り越えて~
5年ほど前、隠岐さやかさんの『文系と理系はなぜ分かれたのか』(星海社新書 2018年)が評判となりました。西欧における近代諸学問の成立や日本近代化における文系・理系に言及し、現代の受験や就職活動、ジェンダー、学際的研究など多角的に取り上げていました。
読了後、その本に刺激を受けて、チャールズ・パーシー・スノー『二つの文化と科学革命』(みすず書房 初版1960年 新装版2021年)を読みました。私は知らなかったのですが、科学と文化を語る必須文献で、科学社会学が精緻化された現在でも常にルーツとして参照される名著だそうです。1959年に英ケンブリッジ大学で行った講演が基調となっています。スノーは、科学革命(20世紀前半における科学技術の発展をスノーは「科学革命」と名付けた)の結果、人文的文化(その代表としての文学的知識人)と科学的文化(その代表としての物理学者)の間には越えがたい亀裂があり、両者は互いに理解しあうことができなくなっており、西欧文化における危機だと警鐘を鳴らしていました。
スノーの講演から60年、私は、日本の高校教育は激変の潮流に巻き込まれていると思っています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に 中国の武漢市で第1例目の感染者が報告され、2020年1月には世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の宣言を行いました。2023年5月に宣言の終了を発表しましたが、WHOは少なくとも700万人が亡くなったとしています。
さまざまなコンテンツを生成できる生成AIが飛躍的に普及しました。従来のAI(人工知能)が決められた行為の自動化が目的であるのに対し、生成AIはデータのパターンや関係を学習し、新しいコンテンツを生成することを目的としています。2022年11月に公開された米国の新興企業オープンAIの対話型AI「チャットGPT」などによって、インターネット上の大量のデータから推論される答えを、数秒で提示することができるようになっています。
さらに、2018年11月の中央教育審議会答申「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」において文理分断からの脱却や文理横断教育の推進に関する提言が注目されるようになり、「文理融合」がキーワードになっています。
スノーは、科学革命(20世紀前半における科学技術の発展)が文化に亀裂を生じさせたと憂慮しました。今日の日本における文理融合の潮流は、教科別になりがちな高校の学びを、本来の“総合知”へと導くものだと思います。