2023年3月の記事一覧
【校長ブログ】自分で戦っていける強い力。人の弱さを分かり、思いやれる力。
「変化の激しいこれからの時代を生きる子供たちに必要な力」というような話になると、どうしても「さまざまな社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会のつくり手となることができる」といった、たくましい強い力のようなものが強調されがちになる。
もちろん、それはとても大事だし、目指すべき方向性だとは思う。だが、冷静に考えて、ハードルはかなり高い。私だって、そんなことができているなんて恥ずかしくて言えない。肝心の子どもたちも、みんながみんな、そういう力を十分に持っているわけではないだろう。
では、それができない子供は駄目なのか。決してそんなことはない。教育で大事なのは、前述のような強い力を育てることだけではない。人の弱さや痛み、悲しみや孤独などを分かる力。思いやる力。そういうものも、人として、また教育において、限りなく大切だ。恐らくどんな時代でも。
目新しくないから、あまり言われていないような気がするので、そういう力を育むことこそ教育の核心ではないですか、と言い続けなくてはいけないなと感じている。
定年間際になって、自分はこの職業を通じてないを一番したかったのだろうと考える。立派な理想とかではない。子供の苦しみ、悲しみ。その子自身が受けるいわれのない理不尽な不幸。それを少しでも減らしたい。無くしたい。その一点に尽きるかな、と今は思う。
恵まれない生まれ。恵まれない環境。そのままの自分を認めてもらえない絶望。それらを乗り越えられる人も中にいる。でも、できない子もいる。そういう子も幸せになるべき時間だと私は思う。
人は他者との関係の中で、他者の存在を受け入れ、生かし、自らの在り方を変え、成長していく。学校はそういう場でもある。
自分で戦っていける強い力。人の弱さを分かり、思いやれる力。両方とも忘れずに大事にしたい。
これは、私が個人的に尊敬している元文部科学省官僚のコラムです。その方と初めてお会いしたのは、9年前の東京都立新宿高校での会合でした。高大接続改革に関するストレートな内容の講話に感銘し、食事をしながらいろいろなことを伺いました。キャリア官僚でありながら、中学校長を3年間経験したり、教育行政と学校現場との接点について常に考察している文科省官僚がいるのだと驚いたのを覚えています。その後、私が埼玉県教育委員会で勤務した際に、県立学校長を対象にした研修会の講師もお願いしたりしました。
今日、3月31日は転退職者には現任校での最後の勤務日です。春日部高校での長年のご勤務、ありがとうございました。私自身も、このコラムのような気概を持ち続けていきたいと思っています。
【校長ブログ】自由と規律 ~令和4年度修了式~
3月24日、春日部高校では修了式がありました。春高生への期待を込めて、激励のメッセージを送りました。修了式の校長講話を紹介します。
一昨日の3月22日、6年ぶりに開催された野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、栗山英樹監督率いる「侍ジャパン」が、決勝で前回王者のアメリカを3-2で破り、3大会ぶりの王座奪還を果たしました。スポーツは、見るものを興奮させます。しかし、春高生諸君は、活躍する者は、目に見えない努力をしていることを気付いていると思います。
春日部高等学校は、校訓「質実剛健」、教育方針「文武両道」を実践し、広く社会で活躍できるリーダーを育てることを目指しています。1年生諸君。いよいよ先輩になります。後輩たちの良き目標になる先輩になって欲しい。中だるみをしない高校2年生は全国に多数います。学習をしっかりやった上で部活動や学校行事など人間力を高める活動に積極的に取り組んで欲しい。自習室は午前7時からオープンし、午後8時まで図書館は開館しています。2年生諸君。3年ゼロ学期が終わろうとしている。臨戦態勢はとれているか?大学入学共通テストまであと294日。現役で第一志望校に合格できるよう、全力で勉強に取り組んでほしい。クラスや部活動の仲間たちと励まし合って頑張ってほしい。
大学入試は、全国の凄い高校生がライバルです。私が受験した40年前も、現役生は、学年プラス1時間の学習時間の確保が必要だと言われてきました。春高生諸君、1日、2時間、3時間の家庭学習をしていますか?北は北海道、南は九州・沖縄の全国のライバルたちは、工夫しながら時間を捻出している。高校に通学するために寮に入っている者もたくさんいます。文武両道。文あっての武です。春日部高校の中で一喜一憂するのではなく、全国のライバルたちを想像し、埼玉県ではなく、もっと大きな世界をイメージしなさい。
怠ける者は不満を言うが、努力するものは目標を語る
受験は個人戦。だが、受験勉強は団体戦。
一人ひとりの心が強くなり、チームの絆が深まったとき、
サクラ咲く日はやってくる
春高生諸君に、1冊の本を紹介します。1949年に岩波新書で刊行された 池田 潔 さんの『自由と規律』(岩波新書 1949年)です。いわゆる百刷り本の一冊で、今日では113回も印刷された古典的名著です。私は高校生の時に読みました。英国の1920年代のパブリックスクールやスポーツマンシップについて紹介しています。
SNS上では、「春日部高校は、体育学校だ」といわれています。旧制中学校のながれをくむ浦和高校、熊谷高校、川越高校などの男子校に共通したものでしょう。しかし、これは運動能力を求めているものではありません。共同体にあっては、“全体の利益”のために“自分”をがまんし、「勝って奢らず、負けて悪びれず」、相手を重んじ、いやしくも卑怯な方法で得た不利益な立場によって勝敗を争うことはしない。“正々堂々”と行動するというスポーツマンシップを習得することが大事であること、それが「自由」の前提である「規律」を身に付ける英国の方法であるということを、池田潔さんの本で学ぶことができます。
春高生には、どのような時であっても、「負けて悪びれない」態度を身に付けてほしい。負けることは悔しいことだが、それ以上に互いに全力を尽くしたことを認め、励まし合えるようになってもらいたい。そのような爽やかな気持ちや態度が、日々の授業や部活動、学校行事でも発揮され、お互いに成長し合える春日部高校を願っています。
春高生の皆さん
元気に挨拶していますか。
他人に優しくしていますか。
夢を諦めていませんか。
志 高く。
【校長ブログ】バトンを後輩へつなげる~春日部高校卒業式における答辞~
3月17日、春日部高校では、入学許可候補者359名とその保護者の皆様が、入学許可候補者説明会のために来校されました。入学許可候補者は各教室で、保護者の皆様は音楽ホールで、入学式までの取組や春日部高校の教育方針などの説明を受けました。新入生一人ひとりの知・徳・体が伸張するように、学校としてしっかりと取り組みます。
3月15日の春日部高校卒業式では、在校生代表の送辞を受け、卒業生代表から答辞がありました。答辞の紹介はあまりないと思いますが、コロナ禍で3年間苦労した卒業生諸君です。私も答辞を聞いていて、心を揺さぶられました。後輩たちへの熱い思いも語られています。入学許可候補者の皆さんもご一読ください。コロナ禍を過ごした卒業生のメッセージを紹介します。
厳しい冬の寒さもようやく遠のき、温かい春の日差しが心地良い季節となりました。本日は私たちのために、このような素晴らしい卒業式を挙行していただき、誠にありがとうございます。また、校長先生をはじめ、御来賓の方々からお祝いや激励のお言葉をいただき、心から感謝しております。今まさに旅立ちの時が来たことを強く感じつつ、卒業生を代表して御礼申し上げます。
3年前の合格発表日に、自分の受験番号を見つけた時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。それと同時に「女性と過ごす残り僅かな日々を全力で謳歌しよう」という気持ちと「春日部高校では、主要五教科だけでなく、情報、芸術、家庭、保健体育、SSHなど幅広い学問を学べるんだぞ」という期待感に満ち溢れていました。
しかし、そんな淡い希望は、新型コロナウイルスの蔓延により、瞬く間に崩れ去っていきました。今まで経験したころのない行動制限がかけられ、春高への登校は2カ月もの間、叶わないものとなってしまいました。その間、増えていったものといえば、春高から郵送され、取り組まずに放置していた大量の課題と体重計のメモリばかりでした。その後、登校が可能になったとはいえ、分散登校であり、マスクを着用してお互いの顔を知らない春高生活が始まりました。75期生の春高生活の開始は順調とは言えないものでした。
しかし、個性的な春高生と過ごす中で、徐々に春高生活は充実したものへと変わっていきました。授業中、眠らないために立ったにもかかわらず、立ったまま寝る者。真冬でも半袖短パンで走り続け、集団走後には尋常でないほど肌が赤くなっている者。なぜか毎週月曜日だけは普段より1時間以上早く登校し、目にも止まらぬ速さで数学の課題を解く同志たち。部活動においては、大会の中止など様々な制限がかかる中で、全力で取り組む仲間たちの姿を見て、私たちは互いに成長していきました。そんな仲間たちと過ごす日々は、あっという間に過ぎてしまいましたが、春高での3年間は人生の中で、最も熱く最も激しい3年間でした。
1年生の時は、例年通りの行事を満足に行うことはできませんでした。そんな中で、3学期末に行われた学年行事は、春高生であることの実感をもたらしてくれました。クラスごとにドッジボールやリレーで競い、様々な衣装を身にまとった男たちが、今までの鬱憤を晴らすかの如く、学年全員で校庭を練り歩きました。
3年生の時の春高祭では、一般公開の中止が発表され、春高全体が悲しみに沈みました。しかし、生徒会の方々を中心に春高生が心を一つに署名活動に参加し、一般公開の実施のため尽力しました。遂に実施が可能になった時の喜びは、一生忘れません。大勢のお客さんに来場していただき、活気にあふれた春高を見て、「春高に入学して良かった」と改めて感じました。
このような素晴らしい春高生活を送ることができたのは、日頃から生徒の自主性を重んじて指導していただき、コロナ禍でも行事を実施するために尽力してくださった先生方のおかげです。サッカーと息子たちをこよなく愛し、SNS上でも春高生に大人気の生物科教諭、十八番のネタを使い回しすぎたあまり、助詞というだけでシーコールを喰らってしまう国語科教諭、普段は緊張感のある授業を展開しながらも、時折笑いをとるためにノートに面白い話を書き留めているお茶目な面がある日本史教諭。そして、世界一素敵で仕草が可愛らしい男子校である春高に希望をもたらした学年主任の数学教諭。他にも多くの先生方に普段の学校生活や、受験期には講習や添削指導などでお世話になりました。3年間、私たちを支えてくださり、ありがとうございました。
在校生の皆さん、春高には何事にも全力で取り組める環境、そしてお互いに切磋琢磨できる仲間たちがいます。この目まぐるしく変化する社会の中では、学校生活でも多くの困難にぶつかることもあるかもしれません。しかし、春高生は移り変わる時代に対応する力を持っています。是非古き良き伝統を継承するとともに、皆さんの手で新たな伝統を創り上げ、より魅力のあふれる春日部高校にしていってください。在校生の皆さんの今後の活躍を、卒業生一同心から期待しています。
保護者の皆様、本日までの18年間を当たり前のように過ごすことができたのは、皆様のおかげです。毎日お弁当を作ってくれたり、大運動会が近づくと、砂まみれになった体育着を洗ってもらったりしました。まだまだ未熟な私たちですが、これから少しずつ恩返しができるように、日々精進してまいります。普段は恥ずかしく、面と向かって感謝の気持ちを述べることができないので、この場をお借りて伝えさせていただきます。本当にありがとうございました。
そして卒業生の皆さん、これから進む道は一人一人異なりますが、春高で過ごした日々は、皆さんの心の中に刻まれていることでしょう。春高で学んだことを、今後の人生で活かし、いつか再開した時には笑顔で思い出を語り合えるように、それぞれの道を歩んでいきましょう。
最後になりましたが、今までご指導してくださいました諸先生方、私たちを支え、大切に育ててくださった保護者の皆様、並びに本日お忙しい中、御臨席を賜りました御来賓の皆様に心から感謝の意を表しまして、お礼の言葉といたします。
【校長ブログ】0から1をつくる大切さ~春日部高校卒業証書授与式~
春日部高校では、3月15日、第75回卒業証書授与式を行いました。卒業した75期生は、新型コロナウイルス感染症の大きな制約を受け続け、0から1をつくること、常にそれを求められた3年間でした。卒業生、保護者の皆様、学年団の先生方の今日までの奮闘に敬意を表します。
閉式後には、保護者の皆様から学年団の先生方をはじめ、校長の私にまで花束をいただきました。75期生諸君の今後の活躍を祈念しております。下記に本日の式辞を掲載します。
厳しかった冬の寒さもやわらぎ、春の訪れが感じられます。この春の佳き日に、潜在能力、将来性などの高いポテンシャルを持っている358名の75期春高生諸君が、この八木崎の学び舎から旅立つことを、大変うれしく思います。
御来賓の皆様のご臨席、多くの保護者の皆様のご列席を賜り、私たち教職員とともに卒業生の門出を祝していただけますこと、心より感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与いたしました358名の75期生諸君、卒業誠におめでとうございます。また、保護者の皆様、ご子息のご卒業、心からお祝い申し上げます。コロナ禍における3年間は、従来とは異なる様々なご苦労、ご心配があったことと拝察いたします。ご子息は、本校での3年間を通してたくましく、立派に成長されました。ご子息を支え、育まれてきたことに対し、敬意を表しますとともに、これまで本校の教育活動にご理解、ご協力をいただきましたことに、心より御礼申し上げます。
75期生諸君。3年前に春日部高等学校の狭き門を突破し、それぞれの夢や希望を抱き、入学されてきたことと思います。しかし、緊急事態宣言下、4月8日に新入生だけの入学式。その後2カ月の休校が続き、例年の1年生とは比較にならないほどの多難に満ちた学年でした。この3年間、コロナ禍にありました。新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受け、3年間マスクを外せませんでした。先輩たちがあたりまえに経験してきた学校行事も多くの制約を受けました。寂しさや悔しさをたくさん味わってきた高校時代だったと思います。そのような中、5月8日からは感染症法上の位置づけが変更され、名称変更も検討されることになりました。しかし、世界がコロナ禍前の時代に戻ることはありません。これからのアフターコロナの時代は、皆さんが創る新たな世界が始まります。
春日部高等学校は、校訓「質実剛健」、教育方針「文武両道」を実践し、広く社会で活躍できるリーダーを育てることを目指しています。75期生諸君は、1年生の春高祭は中止となり、2年生の春高祭は生徒だけの開催となりました。昨年4月、埼玉県教育委員会は「文化祭は一般公開しない」という方針を出しました。生徒会、文化祭実行委員会の執行部諸君は、春高ファンのために春高祭を一般公開したいという思いから、有志でインターネットで署名を集めつつ、校長へ訴えに来ました。校長室で生徒会、文化祭実行委員会の諸君と夜遅くまで議論したのを思い出します。
その時に私が話したのは「正々堂々」。目的達成のためには手段を選ばないという不択手段ではなく、将来、社会のリーダーとなる春高生諸君にとても大切な姿勢だと思っています。
生徒会、文化祭実行委員会執行部の諸君は、私の意を理解して、文化祭一般公開における課題や全国の高校文化祭の一般公開状況をしっかりと分析し、その対応策を提示するという「課題発見解決力」を発揮し、県教育委員会へ正々堂々と要望することができました。その結果、県教育委員会では要望を受け、一般公開容認へ方針を変えました。
春高祭での生徒諸君の取組に対し、私は校歌の「細き流れを集めきて 木を裂き岩をうがきつつ」の一節を思いました。私が1学期始業式で話した「焦らず、慌てず、諦めず、制約があることに『負けてたまるか』と強い気持ちを持つ」ことを体現してくれました。春高魂がしっかりと継承されていることを実感しました。
75期生諸君。本日、春日部高等学校から、それぞれの夢と希望を持って、新たな道へ歩み出していきます。諸君が歩み出す今日の社会は、ロシアによるウクライナ侵攻など混沌とした国際情勢、不安定な経済状況、ウイズコロナ、アフターコロナの変化する社会状況など、課題が山積しています。
「新型コロナは未来を十年早く連れてきた」と言われています。コロナ禍の前から速かった時代の変化は、ますます速くなっています。また、社会の変化とともに、科学の進歩にも目覚ましいものがあります。その結果、皆さんが学んだ知識も急速に古びていきます。急速に変化する社会で長く活躍し続けるためには、知識を折々に学び直し、また考える力を常に磨き続ける必要があります。このような時だからこそ、一人一人の「リーダーシップ」がとても大切です。
そこで、諸君に大正時代、昭和前期を代表する政治家 齊藤 隆夫(1870〜1949)の言葉を贈ります。兵庫県出身の齊藤隆夫は、苦学して早稲田大学を卒業後、弁護士試験に合格し、米国のイェール大学法科大学院に留学します。帰国後、三十年余り衆議院議員として活躍し、卓越した演説力で、1930年代の軍部の政治介入、軍部におもねる政治家を徹底的に批判した気骨ある政治家です。
一本の蝋燭たれ
この言葉は、「蝋燭は身を減らして人を照らす」という古い諺からきているようです。蝋燭は、蝋燭自身を燃やして周りを明るくします。自己満足で終わるのではなく、人のために尽くしなさいという意味です。
齊藤隆夫は、1940年2月、衆議院で軍部と政府が進める日中戦争を激しく批判する演説を行いました。日本史教科書にも書かれている「反軍演説」と呼ばれるものです。その直後、国家国民の将来を考えず、軍部の圧力に迎合した圧倒的多数の衆議院議員の投票により衆議院議員を除名されます。日本は、議会政治も完全に形骸化し、日米開戦という破滅への道を突き進んでいきました。
75期生諸君。ウイズコロナ、アフターコロナの時代は、過去の成功例が通用せず、「正解」がない時代です。「正解」は一つではないでしょう。皆さんの今までの勉強の多くは、一つの答えのある問題を解くことでした。しかし、これからは、何が問題か分からない場合もあれば、問題が分かったとしても誰も答えを知らないという状況に遭遇します。21世紀を生き抜く諸君は、この「解」のない課題に立ち向かう気概を持ち続けましょう。
本日の卒業式において、諸君の飛躍を祈念し、この会場に集います全員で、校歌を力強く歌い、諸君を送り出したいと思います。校歌は、旧制中学校時代から春高生の間で百年に亘って歌い継がれてきました。春高生の魂のふるさととも言うべき不朽の校歌を切磋琢磨した仲間と斉唱し、本校の卒業生として、地域社会と国際社会の豊かな発展のため、生涯にわたり挑戦する決意を新たにしていただきたいと思います。
75期生諸君の健闘を称え、ますますの活躍を期待するとともに、前途に幸多きことを心からお祈り申し上げ式辞といたします。
厳しかった冬の寒さもやわらぎ、春の訪れが感じられます。この春の佳き日に、潜在能力、将来性などの高いポテンシャルを持っている358名の75期春高生諸君が、この八木崎の学び舎から旅立つことを、大変うれしく思います。
御来賓の皆様のご臨席、多くの保護者の皆様のご列席を賜り、私たち教職員とともに卒業生の門出を祝していただけますこと、心より感謝申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与いたしました358名の75期生諸君、卒業誠におめでとうございます。また、保護者の皆様、ご子息のご卒業、心からお祝い申し上げます。コロナ禍における3年間は、従来とは異なる様々なご苦労、ご心配があったことと拝察いたします。ご子息は、本校での3年間を通してたくましく、立派に成長されました。ご子息を支え、育まれてきたことに対し、敬意を表しますとともに、これまで本校の教育活動にご理解、ご協力をいただきましたことに、心より御礼申し上げます。
75期生諸君。3年前に春日部高等学校の狭き門を突破し、それぞれの夢や希望を抱き、入学されてきたことと思います。しかし、緊急事態宣言下、4月8日に新入生だけの入学式。その後2カ月の休校が続き、例年の1年生とは比較にならないほどの多難に満ちた学年でした。この3年間、コロナ禍にありました。新型コロナウイルス感染症の影響を色濃く受け、3年間マスクを外せませんでした。先輩たちがあたりまえに経験してきた学校行事も多くの制約を受けました。寂しさや悔しさをたくさん味わってきた高校時代だったと思います。そのような中、5月8日からは感染症法上の位置づけが変更され、名称変更も検討されることになりました。しかし、世界がコロナ禍前の時代に戻ることはありません。これからのアフターコロナの時代は、皆さんが創る新たな世界が始まります。
春日部高等学校は、校訓「質実剛健」、教育方針「文武両道」を実践し、広く社会で活躍できるリーダーを育てることを目指しています。75期生諸君は、1年生の春高祭は中止となり、2年生の春高祭は生徒だけの開催となりました。昨年4月、埼玉県教育委員会は「文化祭は一般公開しない」という方針を出しました。生徒会、文化祭実行委員会の執行部諸君は、春高ファンのために春高祭を一般公開したいという思いから、有志でインターネットで署名を集めつつ、校長へ訴えに来ました。校長室で生徒会、文化祭実行委員会の諸君と夜遅くまで議論したのを思い出します。
その時に私が話したのは「正々堂々」。目的達成のためには手段を選ばないという不択手段ではなく、将来、社会のリーダーとなる春高生諸君にとても大切な姿勢だと思っています。
生徒会、文化祭実行委員会執行部の諸君は、私の意を理解して、文化祭一般公開における課題や全国の高校文化祭の一般公開状況をしっかりと分析し、その対応策を提示するという「課題発見解決力」を発揮し、県教育委員会へ正々堂々と要望することができました。その結果、県教育委員会では要望を受け、一般公開容認へ方針を変えました。
春高祭での生徒諸君の取組に対し、私は校歌の「細き流れを集めきて 木を裂き岩をうがきつつ」の一節を思いました。私が1学期始業式で話した「焦らず、慌てず、諦めず、制約があることに『負けてたまるか』と強い気持ちを持つ」ことを体現してくれました。春高魂がしっかりと継承されていることを実感しました。
75期生諸君。本日、春日部高等学校から、それぞれの夢と希望を持って、新たな道へ歩み出していきます。諸君が歩み出す今日の社会は、ロシアによるウクライナ侵攻など混沌とした国際情勢、不安定な経済状況、ウイズコロナ、アフターコロナの変化する社会状況など、課題が山積しています。
「新型コロナは未来を十年早く連れてきた」と言われています。コロナ禍の前から速かった時代の変化は、ますます速くなっています。また、社会の変化とともに、科学の進歩にも目覚ましいものがあります。その結果、皆さんが学んだ知識も急速に古びていきます。急速に変化する社会で長く活躍し続けるためには、知識を折々に学び直し、また考える力を常に磨き続ける必要があります。このような時だからこそ、一人一人の「リーダーシップ」がとても大切です。
そこで、諸君に大正時代、昭和前期を代表する政治家 齊藤 隆夫(1870〜1949)の言葉を贈ります。兵庫県出身の齊藤隆夫は、苦学して早稲田大学を卒業後、弁護士試験に合格し、米国のイェール大学法科大学院に留学します。帰国後、三十年余り衆議院議員として活躍し、卓越した演説力で、1930年代の軍部の政治介入、軍部におもねる政治家を徹底的に批判した気骨ある政治家です。
一本の蝋燭たれ
この言葉は、「蝋燭は身を減らして人を照らす」という古い諺からきているようです。蝋燭は、蝋燭自身を燃やして周りを明るくします。自己満足で終わるのではなく、人のために尽くしなさいという意味です。
齊藤隆夫は、1940年2月、衆議院で軍部と政府が進める日中戦争を激しく批判する演説を行いました。日本史教科書にも書かれている「反軍演説」と呼ばれるものです。その直後、国家国民の将来を考えず、軍部の圧力に迎合した圧倒的多数の衆議院議員の投票により衆議院議員を除名されます。日本は、議会政治も完全に形骸化し、日米開戦という破滅への道を突き進んでいきました。
75期生諸君。ウイズコロナ、アフターコロナの時代は、過去の成功例が通用せず、「正解」がない時代です。「正解」は一つではないでしょう。皆さんの今までの勉強の多くは、一つの答えのある問題を解くことでした。しかし、これからは、何が問題か分からない場合もあれば、問題が分かったとしても誰も答えを知らないという状況に遭遇します。21世紀を生き抜く諸君は、この「解」のない課題に立ち向かう気概を持ち続けましょう。
本日の卒業式において、諸君の飛躍を祈念し、この会場に集います全員で、校歌を力強く歌い、諸君を送り出したいと思います。校歌は、旧制中学校時代から春高生の間で百年に亘って歌い継がれてきました。春高生の魂のふるさととも言うべき不朽の校歌を切磋琢磨した仲間と斉唱し、本校の卒業生として、地域社会と国際社会の豊かな発展のため、生涯にわたり挑戦する決意を新たにしていただきたいと思います。
75期生諸君の健闘を称え、ますますの活躍を期待するとともに、前途に幸多きことを心からお祈り申し上げ式辞といたします。
【校長ブログ】クラリネットの寄贈を受けました~思い出の春日部高校へ~
春日部高校は、電気炉メーカーである株式会社エイチアイジー(代表取締役 芳賀 平)様による「埼玉りそな寄贈型CSR 私募債」の発行を通じて、株式会社埼玉りそな銀行(代表取締役社長 福岡 聡)様からクラリネットの寄贈を受けました。芳賀代表取締役のお孫さんが、春日部高校で充実した3年間を過ごせたことから、所属していた吹奏楽部へサポートいただくことになりました。
校長として、今回の御厚意に感謝申し上げます。本校吹奏楽部で、末永く活用させていただきます。
埼玉りそな銀行は、事業者の方が事業資金の調達により地域社会への貢献が実現できる商品として「埼玉りそな寄贈型CSR 私募債」を取り扱っています。私募債を発行される事業者の方から受け取る手数料の一部で、埼玉りそな銀行が次世代の育成に役立つ寄贈品を学校等に贈呈し、地域社会に貢献したいという事業者のニーズをサポートするものです。今回、「埼玉りそな寄贈型CSR 私募債」を発行した株式会社エイチアイジー(本社 埼玉県春日部市南栄町)のご意向により、埼玉りそな銀行からクラリネットを春日部高校に寄贈していただきました。